計算はできるのに、文章題ができない子の共通点
2025年05月22日 13:53
「計算はできるのに、文章題が苦手な子の共通点とは?」
はじめに
「計算はスラスラできるのに、文章題になると手が止まる」──この悩み、実は多くの小学生の保護者から聞かれる声です。計算力と文章題の読解・解答力は、まったく別物。
この記事では、なぜこのギャップが生まれるのか、どんな子どもに共通して見られるのか、そして克服のために家庭や塾でどのようなアプローチが有効かを詳しく解説していきます。
第1章:計算力=算数力ではない
計算が得意な子は、たいてい学校のテストでも高得点を取ります。「九九は完璧」「筆算もそこそこ」
──これらは確かに“力”ですが、それだけでは算数全体を乗り越えることはできません。
文章題とは、「日本語という情報」+「数学的処理」を融合させる高度な知的作業です。
つまり、
文章から必要な情報を読み取り
問題の条件を整理し
計算式に落とし込んで
解答にたどり着く
という一連の“思考の流れ”が必要なのです。
このとき、単なる計算力ではなく、以下のような力が問われます:
読解力(ロジカルリーディング)
論理的思考力
仮説を立てる力
表現力(式にする力)
つまり「文章題が苦手=国語と算数の複合スキルに課題がある」可能性が高いのです。
第2章:文章題が苦手な子に共通する3つの特徴
1. 言葉のイメージができていない
たとえば「みかんが6個入った袋が4つあります。全部で何個ですか?」という問題。
“袋に6個ずつ”という状況が、頭の中に“映像”として浮かばないと、「6×4」という計算式に結びつきません。文章のまま処理しようとして、混乱してしまうのです。
2. 問題文を一度しか読まない
読解力が不足している子ほど、文章題を一度読んだだけで式を作ろうとします。特に、普段の会話で「早くしなさい」と言われがちな子に多く、焦って読み間違えたり、勝手な思い込みで式を立ててしまいます。
3. 問題の「問いかけ」を読み取れていない
文章題は、最後の一文で「何を求めるか」が提示されます。
問題:6個入りの袋が4つあります。みかんは全部で何個ありますか?
この「何個ありますか?」が“問い”です。しかし、文章を読む力が弱いと、「6と4があるからとりあえず足して10」といった“なんとなく”で答えようとします。
第3章:なぜこの課題は見逃されやすいのか?
理由1:計算が得意=算数が得意と勘違いされる
保護者や先生が、「計算できる=算数ができる」と安心してしまうことがあります。実際には、文章題でつまずいていても、学校の評価では“普通”に見えるため、見逃されやすいのです。
理由2:苦手だと言わない・気づかない
子ども自身が「文章題が苦手」と自覚していないケースも多く見られます。「なんかよくわからない」「難しいから嫌だ」と感情で避けてしまい、苦手の根本が明確になりにくいのです。
理由3:国語力との結びつきが見過ごされている
文章題=算数と捉えられがちですが、実は“読む力”“問いを整理する力”は国語(日本語読解)の領域です。
ここを鍛えることで、算数の得点にも直結するのに、そこに気づいていない保護者がなんと多いことでしょうか。
第4章:どうすれば克服できるのか?
対策1:ロジカルリーディングを日常に取り入れる
文章を読む際、「誰が・何を・どのように・なぜ・結果どうなった?」という5W1Hの視点で整理する習慣をつけましょう。ニュース記事や短い物語でもOKです。
一信塾では、国語だけでなく、算数の文章題にもこの読解の型を応用しています。
対策2:図や表で「見える化」させる
文章題を読んだら、いきなり式を作るのではなく、「図に描く」「線分図にする」「表にまとめる」ことで、イメージの具体化を助けます。これは苦手克服の非常に強力な手段です。
対策3:「問い」をハッキリ言葉にさせる
最後の問いかけを、子どもに口頭で「この問題、何を聞かれてるの?」と返してみましょう。何を答えなければいけないのかを意識することで、読み流しを防ぎます。
対策4:失敗パターンの“見える化”
間違えた問題は、「なぜ間違えたのか」を一緒に振り返ることが大切です。計算ミスではなく、文章の読み間違い・情報の抜け落ちに気づけるように導くことで、論理的な自己修正力が育ちます。
おわりに:算数嫌いにならないために
文章題が苦手=理解力がない、ではありません。
多くの場合、「読めない」「急ぎすぎる」「見えない」の3つが絡み合っているだけです。
そこを一つひとつ丁寧にほどいていくのが、我々の指導方針です。
目先の正解ではなく、“考えた過程”を大切にすることで、子どもは自信を持ち始めます。
そしてその積み重ねが、算数への苦手意識をなくし、「もっと知りたい」「解けるって面白い」という前向きな学習姿勢へとつながっていきます。
文章題が解ける子は、実は「考える力」が育っている子です。
あなたのお子様にも、その力は必ず眠っています。